相続税の障がい者控除
意味はまったく違うのに控除額の計算や適用範囲など法律の作り方は「相続税の未成年者控除」とよく似ています。また、「障がい者控除」という言葉自体は所得税の申告をされている方は聞いたことのある言葉だと思いますし、「障がい者」と認められる範囲もほぼ同じです。所得税の確定申告で障がい者控除を適用された方であれば相続税の障がい者控除も適用できる可能性は高いと考えます。
所得税は計算された控除額を所得から差し引く(所得控除)のに対し、相続税は税額から引く(税額控除)ので、納税額を大きく引き下げる事になりますので、「適用忘れ」のないようにしなければなりません。ただ、勘違いされる方が多いのですが、納税義務者は相続人ですので被相続人が障がい者であっても障がい者控除は適用できません。
また、所得税では年齢制限はありませんが、相続税では満85歳までの相続人に限られています。では、具体的な適用要件などを見て行きましょう。

1 障がい者控除の適用要件
(1)障がい者であること
身体障がい者手帳や精神障がい者保健福祉手帳を持っている場合の多くは適用可能です。(等級が7級であれば適用外です)手帳がなくとも市町村長の認定を受けている場合は適用されます。手帳に記された等級を見る事で、控除額の計算に影響する「普通障がい者」か「特別障がい者」が確認できます。
(2)相続や遺贈で財産を取得したこと
他の要件をすべて満たす障がい者の相続人が居たとしても、相続等により何も取得していなければ障がい者控除は適用できません。取得さえおけば相続税額が0円でも問題ありません。
(3)相続開始時に85歳未満であること
控除額を求める時に85歳に至るまでの年数を計算するのですが、1年未満の端数処理で間違いが起こりやすいです。税法では「八十五歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)」と規定されています。1年未満の端数(月数)を切り上げるので、「達するまでの年数」では「〇才●か月」の「●か月」部分を無視して計算すれば良いのです。例えば、相続人が45歳9か月であれば、85歳に達するまでの年数は「40年」となります。
(4)法定相続人であること
例えば、孫に遺言で財産を取得させた場合を考えてみると、孫は財産を遺贈で取得しましたが「法定相続人」ではないので障がい者控除は適用されません。ただし、親が先に死亡しているような代襲相続の場合では法定相続人に当たります。
(5)無制限納税義務者であること
「無制限納税義務者」であることの定義をすべて書き出すことは難しいので、日本に住所があれば適用できる場合がほとんどです。
3 障がい者控除の計算方法
【一般障害者】(85歳-相続開始時年齢)×10万円
【特別障害者】(85歳-相続開始時年齢)×20万円 ※前述(2)のルールに気を付けてください。
4 障がい者である相続人の納税額で控除しきれない場合
控除しきれない障がい者控除額は”扶養義務者(親、兄弟姉妹、祖父母など)”である他の相続人から差し引くことができます。他の相続人が複数名いる場合は相続税額で按分しても協議で配分しても構いません。
5 過去に障がい者控除を適用した事がある場合
未成年者控除の場合と比べると、85歳に達するまで適用可能性がありますので、二次相続の場合は要注意です。簡単に言いますと、過去に適用を受けた障がい者控除の控除額で使いきれなかった残高の範囲でしか適用できません。85歳に達するまでの年数で計算しますので、必ず過去の控除額の方が大きくなりますが、扶養義務者が適用した額も含めて、満額控除した過去があれば、今回の相続による控除額は残っていないことになります。


