相続 ~ 申告までの道すがら 9

不動産や現金・預貯金、有価証券、動産の数々、貸付金や売掛金など、被相続人の財産が把握できたら、「財産明細書」が完成しましたね。遺言書がある場合は遺言書に記載された財産と照合もしなくてはなりません。さて、いよいよ遺産分割協議に入りますが、相続人の数やそれぞれの生活状況、相続人間の関係性や事業の後継など、分割時に考慮しなくてはならない点はいくつも考えられます。

民法上の相続分をベースにするのか、被相続人の介護や世話にかかった費用をどうするのか、財産に中に不動産や同族法人株式など分割し辛い財産をどうするのか?分割協議を相続人で始める前に知っておいた方が良いことがあります。

遺産分割の方法

・現物分割 : 被相続人の財産そのものを相続人が取得する、一番分かりやすい分割の方法です。例えば、自宅は配偶者、同族法人の敷地や同族株式は会社を引き継いだ長男、駐車場と預貯金は長女という風に分割する方法です。

・代償分割 : 分割取得し辛い財産を相続人の一人が取得し、代わりに他の相続人に自分の現金を渡すような分割方法になります。例えば、同族法人の敷地と同族株式の価格が遺産全体の80%を占めているとすれば、配偶者と長女は民法上の相続分を大きく下回る財産しか取得していない事になります。もちろん、そのまま分割協議を終了させる事もありますが、代償分割とは長男から二人へ長男の現金等を渡して分割する方法です。

・換価分割 : 相続財産を現金化し分配する方法です。例えば、駅前で広大な面積を持つ駐車場を相続人の一人が取得すると相続人間で不平が生じる場合に、駐車場を譲渡して現金化して配分し、相続による取得割合を調整する分割方法です。被相続人だけが住んでいた自宅や遠方の土地が相続財産にある場合によく用いられる方法です。

その他にも、「絶対に民法上の相続分で分ける」と相続人間が合意している場合に、すべての不動産を相続人全員の共有で取得し、預金や有価証券もすべて一つの口座に集約させる場合もあります。

遺産分割協議

相続人間の話し合いが、すんなり合意できれば良いのですが、冒頭で話していたような個々の主張する点がありますから、現物分割で埋まらない取得財産の価格差を代償分割や換価分割で埋めることができれば良いのですが、その話し合いもまとまらなかった場合は「未分割財産」という事になり、譲渡することはおろか預金や有価証券の取引口座が凍結されたままで相続人が、いつまでも使えない状態が続くこともあります。

それに加えて、相続税の申告書の提出が必要になった場合ですと、配偶者控除や小規模宅地の特例といった納税額に大きく影響するような特例が使えなくなり、相続人全員に本来負担する必要のない資金の負担が生じることになります。

また、互いの主張の正当性を示すために家庭裁判所などで「調停」を求めたり「審判」を受けたりする場合がありますが、当事者の一方が弁護士等の専門家に依頼すれば、相手方も弁護士を立てる場合が多く、相応の費用等が必要になるのは言うまでもありません。

私の個人的な考えですが、争族になると遺産がどんどん目減りしていくことが多いように思いますので、価格的な面だけを見ると「得」になるとは限らないのです。しかし、相続人間で長年の不満が噴き出して感情的なもつれが生じ「相手を負かしたい」ために続く裁判もあるように思います。

相続の時に問題になりそうな点を予想して、頭も体も元気なうちに家族で話し合うのが一番の「争族対策」ではないかと考えます。

※過去のひとり言「一番の相続税対策」2025年9月24日公開も参照してください。