遺言書があればOKとは限らない

相続税の申告書の提出期限は原則として被相続人の相続開始の日から10か月になります。つまり、遺族は初七日や満中陰といった法事を済ませながら遺産の分割協議も行わなければなりません。ところが、相続人間の話し合いが難航し申告期限までに遺産分割が間に合わないときには、「未分割の相続税申告書」として提出することになりますが、配偶者控除等の特例が適用されず、相続人全員が不利益を受けることになります。

そんな事態を避けるために、被相続人が遺言書を作成し自分の財産の分割に”意思”を示すことで相続人間の争いを回避しようとする場合があります。相続人の権利に関する遺留分の問題は残りますが、遺言により遺産分割が確定することになります。ところが、被相続人が晩年認知症を患ってしまったような時に”遺言書”によって不利益を受けた共同相続人から「遺言書の無効確認」訴訟が起こされる場合があります。

「認知症の父に無理やり書かせた」とか「だまして書かせた」などと、遺言書の正当性に疑いがあるとして「そんな遺言書は無効だ!」というような争いですが、先述したように色々としなければならないことと平行に進めるには10か月の申告期限は短いように思います。

たとえば
「同居する長男にすべての財産を相続させる」なんて、遺言書があった時に長女や二男など他の相続人に遺言書の無効確認訴訟が起こされたとします。すると、長男は「裁判が決まるまでは遺産分割は成立していない」と考え、相続税の申告期限には民法で定める相続分で申告したなら税務署から追徴課税を受けることになります。
これは、形式的に有効な遺言書がるので無効訴訟の判決がでるまでは「有効」なままなので、遺言書に記載されたとおりの内容で相続税の申告書を作成し提出しなければなりません。

その後、「無効」であると判決が出れば、長男は全財産に対する相続税を支払っているわけですから、判決から4カ月以内に税額を計算し直した「相続税の更正の請求書」を所轄税務署に提出し、納めすぎた税金の還付を受けます。

遺言書があっても、すんなり遺産分割が終わらない事もあるので、日ごろから相続人と話し会える関係性があれば問題は生じないのかも知れません。訴訟になると余計な労力や費用も必要になるので、財産を有した高齢の方はご注意ください。

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