遺産分割と補正率

相続税は被相続人の財産を取得した人に課税されます。(「遺産取得者課税方式」と言われます。)アメリカのように被相続人の残した遺産そのものを課税対象とし「納税義務者は被相続人」とする国もありますが、日本では「遺産を取得した者が納税義務者」となります。

「結局、遺産の全部に課税されるなら、どっちでも一緒やん」との声も聞こえそうですが、財産評価の面から考えると大きな違いがあるのです。

【設例で説明しましょう】

・被相続人甲は図のような宅地を所有していました。
・被相続人はアスファルト舗装をして貸駐車場を経営していました。
・付近は住宅地で、上下水道管は数年前に設置済です。

▶この土地の相続税評価額を計算すると、次のようになります。

路線価300,000円 × 0.89(奥行補正)= 267,000円 (1㎡当たりの単価)①
267,000円(①)× 0.98(奥行長大補正)=261,660円 ②
261,660円(②)×0.77(地積規模による減額)×1,200㎡ = 241,773,600円

▶甲には3人の子供がいましたが、遺産分割協議で誰かひとりが相続で取得したならば評価額は上記のとおり2.4億円余りとなります。ですが、他に金融資産が少なかったことなどから、次のように土地を分割することにしました。

・長男は被相続人の事業を継続します。
・二男は宅地転用も視野に入れ、隣地との境界をフェンスで囲むよう希望しています。
・三男は将来的には譲渡し換金しようと思っていますが、しばらくは貸駐車場を継続します。

▶この土地を遺産分割協議によって取得した相続人ごとに計算すると、次のようになります。

路線価300,000円 × 0.89(奥行補正)= 267,000円 (1㎡当たりの単価)①
267,000円(①)× 0.96(奥行長大補正)=256,320円 ②
256,320円(②)× 400㎡ = 102,528,000円(長男、二男、三男とも同額)

ひとりで相続すると2.4億円余りの土地が、3人で分割することにより一人当たりの金額が1億円を超えています。つまり土地全体の評価額では、102,528,000円 × 3人 = 307,584,000円 となり、最初に計算した金額より65,811,000円も高くなっているのがわかります。

これは、3人で分割する事により“地積規模による減額”が無くなったことが原因になりますが、全体で6.5千万円も高くなると相続財産の総額が大きくなり相続税も高くなってしまいます
「じゃあ、誰か一人で相続した方がいい」と考えた方が正解なのかも知れませんが、二男が「ここに自宅を建てたい」とか「お店をやりたい」と考えていたり、三男が「老後に備えて投資をしたい」と考えているとすれば、「兄弟それぞれの正解」がある事になります。

補正率を知る事で遺産分割によって評価額が変わる事は理解できますが、遺産分割協議の時に理解した上で相続税評価額を計算しておかないと、後で「俺の相続税が高くなった」と兄弟間の争いに繋がるかも知れません。