遺言書があっても遺産分割協議はできるの?

遺言に基づいて財産を取得するのを”遺贈”と言い、相続権に基づいて財産を取得する”相続”と区別されます。また、遺贈には相続分のように財産を特定せず財産を取得する割合だけを定めた「包括遺贈」と具体的に特定された財産を取得させる「特定遺贈」という方法があります。包括遺贈の場合は相続権と同じような効果を持つために、遺贈を放棄するには相続権の放棄と同じように家庭裁判所に放棄する旨を申し出なければなりません。

ところが、特定遺贈は「この財産を遺贈してもらうのを放棄します」と意思表示をすれば足りますし、放棄が可能な期限も設けられていません。このことから、仮に「長男に〇〇町の駐車場500㎡を相続させる」と遺言書に記載されていても、長男が「駐車場経営なんかしたことないし、〇〇町やったら二男が住んでいるやん」などと考え、「○○町の駐車場より預金や有価証券を相続財産として取得したい」と望むなら、特定遺贈を放棄し相続人間で遺産分割協議を行う事ができます。

国税庁のタックスアンサー№4176「遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税」には以下の通り記載されています。

特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときには、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。したがって、各人の相続税の課税価格は、相続人全員で行われた分割協議の内容によることとなります。

なお、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。

国税庁のホームページには実務的な取り扱いが明記されていますが、包括遺贈は相続権と同様の法律効果がありますので、「遺贈の放棄」が事実上でなく法律上行われた方が後のトラブルの防止になると考えます。そこで、遺言書がある場合は、1遺言書で遺産分割協議が禁じられていないこと、2受遺者及び相続人が遺言書の内容を承知した上で分割協議を行うことに同意していること、3遺言執行者が定められている場合は執行者の同意もあること、などの要件も備えている方が、「遺贈の放棄→遺産分割協議の実施」が円滑に実行できると考えます。