相続の時に精算する課税方式【後編】
いよいよ今日から贈与税の申告期間が始まりましたね、戸籍謄本や登記事項証明書などの添付書類が必要になる事も多いので、早めに申告準備を整えましょう。税務署で行う「申告相談会場」は非常に混雑していますのでコロナが猛威を振るっていた頃に比べれば感染症などの怖さがマシとは言え、混雑した会場に行かなくても済むように国税庁が推し進めるスマホやパソコンを使った電子申告(e-Tax:イータックス)を行うのが便利だと思います。

さて、相続時精算課税の後編は制度を適用する場合の注意点をお話します。
贈与者の遺産の前借りになるということは前編で話しましたので、相続時に相続財産に加算するという点は了解済みだと思いますが、実際に加算しようとすると、「あれ?贈与でもらった現金で株を買ったから、今の株を計上すればいいのか?」「もらったお金と自分のお金の区別がつかないぞ」「土地をもらった時と比べて、地価が随分上がってしまったぞ」「もらった土地は売却したので既に無いぞ」など、時間の経過とともに財産は変化していくものですから、「どのように加算するのか?」という質問を受けることがあります。
実は、相続財産に加算するのはモノではなく「贈与を受けた時の価額」なのです。例えば、500万円の現金贈与を受けた後に、株等で運用し贈与者が亡くなったときには運用益もあって3000万円もの財産に膨らんでいたとしても、相続財産に加算するのは500万円なのです。もちろん、運用に失敗し0円になっていたとしても500万円を加算しなければなりません。
また、土地を贈与する場合には相続税評価額で贈与税を計算するのですが、相続税の計算過程で課税価格を減少させる「小規模宅地等の課税価格の特例」は、贈与税の申告の際には適用できません。
[注意点の一例]
| ① 相続時の精算は贈与をした時の価額によるので、現金であれば良いのですが不動産や有価証券を贈与した場合は贈与時より価額が下落すれば“高い評価額”で相続税が課税されることになります。逆に値上がりすれば“安い評価額”で課税されることになります。 |
| ② 一度、“父と子”の関係で相続時精算課税を選ぶと、父からの贈与は以後暦年課税に戻すことはできません。(母や祖父母であっても同じです) |
| ③ 土地を贈与する場合に居住用や貸付事業用であっても、相続税で評価するときのような“小規模宅地の減額措置”は適用できません。 |
「そもそも、贈与者の遺産を前借するだけだから相続税対策には向いていない」制度ですが、令和6年度の税制改正によって「基礎控除110万円」が創設されたことで、相続税対策としても有効な手段になりました。これまでは、地価が今後上昇しそうな収益物件を贈与して贈与者(被相続人)の預貯金などの増加を抑制するような効果に限定されていましたが、暦年課税では「贈与加算」の対象となる7年以内に贈与した分も加算しなくていいので、確実に財産を減少させることができるのです。
| 課税方式 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
| 贈与相手 | 誰にでも贈与できる | 子(推定相続人)や孫にだけ |
| 基礎控除額 | 110万円 | 110万円 |
| 贈与加算 | 原則、相続前7年分は相続財産に加算される | 贈与加算なし |
※相続時精算課税の適用には「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要だと既述しています。注意するのは、現金110万円だけの贈与を受けた推定相続人(子など)は贈与税の申告書を提出する必要はありませんが、相続時精算課税を適用する意思表示として、「相続時精算課税選択届出書」を添付書類とともに税務署に提出する必要があります。



