「今日は木曜やから」 まごろく1

入居基準でC規格の団地に住んでいた頃に、結婚5年目の二男夫婦が孫を連れて遊びに来てくれた。本当に目の中に指を突っ込まれた時は、サスガに痛かったけれど、二人の息子が居た僕にとって、二男夫婦に生まれた孫娘は初めての女の子で、涙が出るほど痛くても、鼻血が出るほど指を入れられても、笑顔であやせるほど可愛かった。
夕食後に、少し機嫌が悪くなった3歳児を「抱っこクセがつくから止めて」という息子を無視して、少し肌寒い表に連れ出した。きれいな月でも見せようと出て来たのに、あいにく今夜は月が出ていない晩だった。孫娘を左腕に座らせるように抱いたまま、歩きながら空を見上げると月明かりがないおかげで星がいつもよりキレイに見えた。
ようやく機嫌の直った孫娘をダンスの話で盛り上げながら、また空を見て「今日は星がいっぱい見えるね」と言うと、「星もキレイからええやん」と返されたので、「星さんと一緒にお月さんも居ったら良かったのにね」と続けると、『あんなぁ、今日は木曜日やからお月さん居れへんねんで』 と、まじめな顔をして返された。笑いそうになったけど、(教えてあげる風な)孫娘の顔を見ると、「あ、そうか!じいちゃん忘れてたわ」とポリシーを曲げて忖度してしまった。


