相続するのを放棄する事もある

相続人は”相続”により被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると民法に定められていますが、色々な事情により”相続”を放棄するようなケースもあります。たとえば、相続人間の遺産争いに巻き込まれたくなくて「私は遺産はいらんから、兄ちゃんとお姉ちゃんで分けて」とか言うのは単純に自分の相続分の放棄と言えますが、慎重かつ迅速に対処しなければならないのは被相続人に債務(借金など)があった場合です。

最初に民法で「一切の権利義務」と話したように、「相続する」とはプラスの相続財産にかかる”権利”だけでなく、マイナスの財産にかかる弁済の義務も承継することになるのです。すると、被相続人が預金や不動産を遺したとしても借入金も同時にあったなら、借入金の額によっては多額の負債をいきなり抱えることになりますから、相続人には法律的に「相続を放棄する」権利が与えられているのです。

「じゃあ、財産をすべて調べてから相続するかどうかを決めるわ」と考えてしまいがちですが、”じっくり考える”期間として民法が用意したは3カ月しかないのです。いわゆる満中陰までに7週間が経過していますから、相続放棄を家庭裁判所に申し出るためには、迅速な財産調査を要します。ただし、被相続人が幅広い事業を展開して財産の全容把握に時間がかかるとか、相続財産が全国に点在して把握が困難など、正当な理由があれば「相続放棄申述書」に代えて、相続の放棄の期間伸長にかかる「家事審判申立書」を提出する事もできます。

債権者にすれば「貸したものが返済されない」事態に陥るわけですから、相続人に責はないと言うものの法律に沿った手順を守らなければならないのは言うまでもありません。相続放棄の申述書等の提出以外にも、放棄が認められるために気を付けておかなければならない点があります。

「被相続人の財産を使えば、相続する事を承認した」とみなされる点です。つまり、預貯金の解約や払い出しをして借金の一部を返済したり、貸付金を取り立てたり、不動産などの名義変更も相続放棄が認められない事由になりかねません。過去の裁判では「それはやむを得ないでしょう」というようなケースもありますが、「やむを得ない」ようなケースですら裁判になってしまったのです。分かりにくいと思う点では、被相続人の所得税の還付申告をした場合や被相続人に支給される医療保険金を受け取った場合も「単純相続を承認した」と指摘される恐れがあります。

最終的には家庭裁判所の判断になりますので確定的な事由が言えませんが、相続財産を放棄する場合には迅速に行わなければなりませんが、慎重に専門家と相談して進めていくのが安全だと考えます。(家庭裁判所のホームページ「相続の放棄の申述」は、必ず参照してください。)

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